剣道稽古日誌(令和5年10月5日)No.187

一般 S木先生、Y本先生、S井先生、K内先生、T屋先生、M川、S本、S藤

高校生 磐高剣道部員


タイトル「もっと打たれなさい」

毎年冬になると1度はスキーに行きます。

はじめてスキーをしたのは大学生の頃。北海道の岩見沢出身の同級生がいて、そこに初心者2人経験者1人の計3人の同級生でお邪魔して、1周間ほどスキーをしました。以来40年近く、へたなスキーを毎年楽しみにしています。

当時私はよく転びました。頭からゲレンデにつっこんでみんなに笑われたりもしました。それでもパウダースノーを滑降するスピード感は、転ぶ恐怖を上回る魅力があり、何度も転び続けたものです。

もうひとりの初心者の友人は、転ぶのが怖いのかあまり転びませんでした。最初は同じくらいの技量でした。ところが3日目くらいからあきらかな差がつきはじめました。私はそれなりに滑れるようになりました。かたや転ばなかった友人は一向に進歩がみえず、みんなから遅れて取り残されるようになりました。

スキーを経験した人ならわかるはずです。転ぶ人のほうがスキーの上達が早いのです。転ぶことを怖がっていては、こうすれば転ぶ、こうすれば転ばないという経験がいつまでたっても得られません。その結果転ぶほうがはやく転ばなくなり、転ばないほうは転ばないこととのひきかえに、いつまでたっても滑られないということになります。

剣道でも同じことがいえます。

打たれることを経験することで、相手の攻めの巧みさや自分の剣道の弱点への気付きがあります。

つまり、よけてばかりで打たれない、あるいは打たれたくないがために我慢せずに打ちにはやるという稽古は、そういう大事な気づきがいつまでも得られません。

その結果、私の友人と同じように、打たれないこととのひきかえに、自分の弱点を克服した一本が打てないということになります。

しかし、転びたくない、打たれたくないという気持ちは、自然なもので、本能的といっていいかもしれません。これを克服するのは大変難しいことです。

それでもそういう防衛本能に打ち克って「打ってよし、打たれてよし」の気持ちで稽古に取り組んでみてください。そして打って返され、打って抑えられるそういう稽古を積んでください。

そうすることで、スキーで転んでうまくなるのと同じように、いつの間にか剣道上達の道も開けるはずです。

強くなりたいなら、本能に逆らって「もっと打たれなさい」。