「色」って何?

剣道で「色」を意識したことはあるだろうか。

「色」とは相手に気配として伝わるものと思われがちだが、実はそういう感覚的なものではなく、技術的なものである。

ここでいう「色」とは、ある動作の直前に現れる予備動作のことである。意識してこれを行う場合もあれば無意識で行う場合もある。

たとえばボールを遠くに投げる時、いきなりボールを手から離すことはしないだろう。多くの人は腕を後ろに振り上げ、反動をつけるはずである。このふり上げる動作のことを「色」という。

剣道では打とう打とうと心に浮かんだ時にこの「色」が現れる。ただ、ボールを投げる時とは違い、ほんのわずかな一瞬の動きである。そのせいか、本人も気づいてないこともある。

具体的には左足をわずかに引いたり、竹刀を下に下げたり、目で打つところを見たり、人によって様々である。しかし、本人は気づいてなくとも、相手には気配として確実に伝わっている。

剣道における「色」で問題なのは、実はこの「色」の有無ではなく、意識しているかしてないかということである。

意図的に「色」を出したり、消したりすることは、練習で可能である。

それができると、「色」でフェイントをかけたり、居着かせたり、出頭を打てたり、相手を自在に制御可能となる。つまり意識して「色」を使うことが重要なのだ。

「色」を感覚で捉えるのではなく、打突の好機を作り出せる魔法の技術として使いこなすこと。そうできれば今まで見えなかった相手の心の動きも意識して捉えることができてくるのではないだろうか。