吉崎勝先生への弔辞を掲載します
3月30日行われた吉崎勝先生の葬儀に当会を代表して奉読した弔辞を掲載します
弔辞
磐城高校剣道部、OB、 OG会の木曜稽古会参加者一同を代表し、剣道範士吉崎勝先生にお別れの言葉を述べさせていただきます。
先生との稽古は今から20年ほど前に遡ります。先生が磐城高校に赴任され、剣道部顧問に就任。以来、毎週木曜日、先生から、時に厳しく、時に丁寧に稽古指導いただきました。
先生の技を少しでもぬすもうと皆必死で稽古しました。先生との稽古は私どもの誇りです。
当初は大人中心の稽古会でしたが、先生のご提案で剣道愛好者が自由に参加できるようにし、一般、高校生はもとより、小学生から中学生まで参加者の幅が広がりました。
先生の、剣道人を分け隔てなく大切にされる姿勢がそこにはありました。
その稽古も、3年前の令和2年2月20日の稽古が先生との最後の稽古となりました。
その前から先生は、体調の不調を訴えておられましたが、コロナの影響もあり、稽古自体ができない環境が半年以上続き、そのまま先生との稽古もできずじまいになってしまいました。
今一度、先生との稽古ができればという願いも今は空しく。本当に残念でなりません。
先生との稽古を思い出すと今でも私の血がたぎります。
旺盛な気迫、しなやかな剣さばき、下から突き上げるような攻め、押しては引き、ひいては押す足さばき、相手の打ちを紙一重でかわし、すぐ切り返しての面、どんなに間合が詰まっても繰り出される返し胴、機を見ての突、下からせめてのかつぎ小手、晩年はスッと間合を詰めて色のない面を何度も繰り返されていました。どれも私どもの真似のできない一流の技でした。
かたや小学生との稽古では膝をついて子供の目線になって、稽古されていたのも印象的でした。強い者への稽古だけでなく技量に応じた稽古をされる姿は、孔子が弟子に教えを説く光景も、さりありなむと思いました。
とにかく稽古が好きな先生。ある時、今日は母校の筑波大学で稽古してきたよと話されて、では、今日は2回目ですねと私が言うと、笑って3回目だとおっしゃった時、私はとても真似ができないと感服いたしました。
お酒が好きで、範士号受賞祝いの酒宴で、楽しくおいしいお酒飲みましたね。その時聞いた先生のお話。8段受審されたときの事、全日本選手権に出場された時のこと、先生の恩師の中野八十ニ先生の事。話された時の笑顔。どれも得がたい貴重な思い出です。
また先生は剣道人を大切にする方でもありました。教え子のことをいつも気にされ、稽古仲間が入院されるとすぐ見舞いをされ、私の奉仕する神社にまでご夫婦で初詣いただきました折は恐縮しました。先生が掲げられた剣道場の師弟同行の掛軸。あれは、先生のライフワークだったんですね。剣道の場だけでなく、剣道以外の場でも実践されておりました。
今年の桜も今満開です。それはまるで先生の御生涯のようです。満開の桜のような見事な花を咲かせた剣道人生を先生は送られました。78歳。もう少し長く生きて稽古をしていただきたかったですよ。でも稽古でいただいた数限りないご指導は私どもの体の中でいつまでも消える事なく残っています。今は静かに御瞑目ください。
生前賜った御指導に心より感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。どうか泉下で私どもをお導き下さい。
令和5年3月30日
磐高木曜会 代表 佐藤尊則
0コメント